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どうやら僕はこの時代に生まれ変わったようだ。
そして同じ名前の女性を愛した。これは偶然なのだろうか?
もし、結衣が彼女の生まれかわりならば、伝えたい。君とまた会えたこと。
午後から酷い天気になり、近くに雷が落ちた。
鼻に酸素のチューブが繋がっている。
夜は結衣のお母さんが泊まりに来ていた。医師からは覚悟をと告げられていた。
その日は珍しく結衣が駄々をこねて僕がそのまま病室に残ることになる。
消灯時間は過ぎていたが、ベッドサイドの灯りは点けていてくれと言う。
結衣が寝ている場所を少しずらす。
「……隣に来て」
静かに結衣のベッドに入る。背もたれを上げて少し体を起こした。
手を握る。
「こんな体になって……何もしてあげられなくてごめんね」
「いいんだよ、そんなこと」
「何か、もう疲れちゃったな……」
「……そうだね」
そうだね……今までなら決して言わなかった言葉。
そんなことはない……否定ばかりして、彼女を励ましているつもりでいたが、
それはこの現実に、僕自身が逃げていることに他ならないと気づいた。
寄り添うとは同じ景色を見ることだ。彼女が死を見つめているのなら、もう僕は目を反らさない。
人は生まれ変わるんだと伝えたら、少しは楽になるのか?そんな風に考えたが、
彼女は今を懸命に生きている。
それを僕の口から言うことは許されないはずだ。
おでこを僕の肩につけて、安心したように眠りについた。
結衣……君は強いな。
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