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空中浮遊の魔術を使っているのか、落下してくる素振りは無い。
「アシッド・プレッシャーLEVEL5!」
かけ声と共に、スーツ男は正面の壁に手を翳した。
掌から放たれた黄色い液体が、壁に付着すると一瞬で熔解して熔け崩れた。
それを確認してから男は外に飛び出す。
「なっ?! 制限が掛かっていない? どこのサーバーに繋げてやがる!」
秋継は驚愕してからその後を追う。
男の携帯電話から光が発生し、地面に魔法円が生まれる。
サークルにスクウェアと言うベーシックな形だ。
「ディスペルLEVEL3!」
叫び声と静電気が発生したかのような音と共に、描かれた魔法円が霧散する。
「っ?!」
スーツ男は慌てて背後を振り向き、呪文の使用者――秋継を睨み付けた。
「貴様……何故、俺の邪魔をする?」
冷静に言葉を発しているが、声には苛立ちの険がある。
怒りを押し殺しているのが見え見えだ。
秋継は鼻で笑いながら、男を値踏みするように眺めた。
「テメェー、バビロンの住人じゃないな? この都市でのスペル・コードにも制限がかかってんだよ。バビロンの住人なら誰でも知っている事だ。テメェーが一般人じゃないなら、身分証明コードを提示しろ!」
沈黙するスーツ男を見て、秋継の目がすっと細まる。
「一般都市でのスペルコードは、通常ではレベル2までしか使えないって知っているよな? レベル5なんて簡単に使えやしねぇ。それはバビロンでも同じだ。それが可能なテメェーは、別の魔科学都市の住人か?」
箒族の取り締まりを思い出す。
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