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「さて、二十九層構造体もこれでクリアーだな」
岩山の間に鎮座する、砦から黒煙が立ち上っていた。
中世の赴きの砦は辺りの風景に溶け込んでいるが、それを眺める制服姿の秋継とアーデルはかなり浮いた存在に見える。
「しかし……だんだん防壁が硬くなって来たな。そろそろ絡め手を考えないと時間が足らんな~」
悩む秋継の頭の上で、アーデルは辺りの景色を見回して感激していた。
草花から蝶々などの昆虫を見ては、目を輝かせて喜んでいる。
『凄い凄い! これが外世界の情報か~。新鮮で楽しい~。ゲームのエミュレータをアドヴァンスプログラムにパッチしたのは正解だね』
「まあな。起動しちまえば負荷が掛かるのは向こうのシステムだからな。デメリットは、ほぼねぇーよ」
秋継は仮想空間化に成功したデータ領域の出来に満足した。
見渡す風景は全て電脳空間だ。
秋継は、電脳空間に直接アクセスする魔術に長けたコードエイジである。
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