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思い出すのは何時も断片だ。
記憶と言うものが、幾つものパーツの集まりで出来ていると言われていた事を実感する。
五感に刻まれた様々な記憶。
見知らぬ廊下の景色。
横を一緒に走る黒髪の少女。
握った手の感覚は無い。
欠損。
震える世界。
大人達が慌てふためき何かを叫んでいる。
だが、音は一切聞こえて来ない。
欠損。
息が上がる、胸が張り裂けるような痛み。
手を引く父親の背中。
閉じた箱。
暗闇の世界。
空腹と寒さ。
世界に光が生まれる瞬間と安堵。
繰り返される断片の光景は何時もの事だった。
不規則な状態で寝ると、うなされるように見る悪夢。
目を開くと殆どを忘却してしまう。
不都合な悪夢。
不出来な記憶。
「くっ……そ。最近は見てなかったんだがな」
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