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更に十分足らずの時間が経った頃だった。
東側の校舎方面から近付いて来る人影が見える。
秋継は目を細めて姿を確認しようとするが、暗闇と距離が開いている為に判別は困難だ。
仕方なく携帯を取り出すと、スペルコードを走らせる。
「ナイト・ヴィジョンLEVEL2」
暗闇を見通す魔術によって、校庭を進む人影の顔を確認した。
近付いて来る人影はただ一人。
それはアーニャであった。
両手首と口をガムテープで塞がれており、涙目の顔は今にも泣きそうだ。
「一人だけ? 奴らはどうした?」
怪しむ秋継の横で、アルファは遠くの景色を眺めるように手を額に当てながら、まじまじとその人影を眺めた。
「82パーセントの確率で、対象をアーニャ・グラヴィウスと判断します。しかし……」
そう呟きくと両腕を左右に広げる。
左手はアーニャへ、右手は何故か背後に向けていた。
「ダブルエフェクト。サンドストームLEVEL4」
アルファの声に応じるように竜巻が左右に生まれる。
砂を巻き上げて回転する渦は空に昇る龍のようだ。
校庭で巻き起こった砂嵐が、辺りに拡がって行く。
その中で、静電気が発生したようなパリパリと妙に渇いた音が混ざった。
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