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ポタッ───、
「相変わらず、すごい汗。クーラーついてるのに。」
ベッドサイドの間接照明が照らす一室、女はフフッと愛おしそうに笑みを零した。
滴り落ちた汗と共に、ふうっと息をついて覆いかぶさってきた逞しい背中に左腕を回し、重みで自由がききにくそうな右手で男の前髪を掻き上げ、額に滲む汗を指先で拭う。
「動くと汗かくんだよ。汗浴びるの嫌なら、二回戦はお前が上な?」
すっとベッドに沈む女の背中に両腕が入れられて、クルリと身体が回る。
「え、上は……、重力によって可能性が減るのでは。」
上下入れ替わった二人。
普段あまり下から女を見上げることがない男は、戸惑うような女の反応にゆるりと頬を緩めた。
「んなわけねーだろ。逆に可能性上がったりして。」
新月の今日。
月の満ち欠けと見事にリンクする周期の女の身体は、排卵日を迎える。
結婚して二年の夫婦は、そろそろ子供でも、と数ヶ月前からタイミングを見計らって身体を重ねていたのだ。
「上がるわけないじゃない。ねぇ、上は嫌だ。」
女が恥ずかしくて嫌がっているのなんて、百も承知。
したり顔でクスクス笑う男は、少し休憩な、とクシャクシャっと女の頭を撫で、そのまま自分の胸元へと導いた。
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