ひなちゃん

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ひなちゃん

お墓参りを済ませたら、また昔一緒に遊んだあのとうもろこし畑に行ってみたくなった。 今日くらいは想い出に浸ってもいいだろう。 お稲荷様の裏から奥へ進み、とうもろこし畑のさらに奥へと。 あのヒマワリの道に来た。 昨日と同じ場所に座り暫くヒマワリを見つめてた。 そういえば、昨日の女の子、あれは陽菜ちゃんが見せた幻だったのかも知れない。 約束は守れなかったけど、ここはやっぱり特別な場所。 なんだか穏やかな気持ちになれる。 暫くくつろいで、少しうとうとしていたらしい、目を覚ますと僕の左、そう5メートルくらいの所に女の子が。 昨日と同じ、白いワンピに麦藁帽子でヒマワリを抱えて。 (陽菜ちゃん?) これは夢? まあどちらでも構わないか。 こっちを覗きこんでいたのか、僕と目を合わせると少しビクッとした。 でも今日は逃げ出すことはないようなので、僕は座ったまま女の子に微笑んで 「陽菜ちゃんかい?」 と言ってみた。 すると、キョトンとした顔で近づき 「アタシひな。 ねえ、おじさんだあれ?」 と言った。 やれやれ、どうやら夢ではないらしい。 春に高校出たばかりでも小学生から見れば“おじさん”か。 それより陽菜ちゃん? 偶然にしては出来すぎじゃないか。 「僕は陽太。 太陽をひっくり返して陽・太。 そのヒマワリスゴイね。」 そう返したら、ひなちゃんが笑顔になった。 「エヘヘ、そうでしょ。 アタシ、太陽に向かうで陽向。」 陽菜ちゃんでなく、陽向(ヒナタ)ちゃんだったがどうやらひなちゃんが愛称のようだ。 ある意味陽菜ちゃんが会わせてくれた事には違いない。 「ひなたちゃんか。 ヒマワリ、好きかい?」 「うん、大好き! あのね、 “ひな”でいいよ。」 「ひなちゃんだね。 上の名前は? 僕は天野、 あ ま の、よ う た。」 「夏川陽向、 なーつーかーわ、ひーなーた。」 「そうか、夏川さんちのひなちゃんだね。」 高野さんじゃなかった。 やっぱり、無関係な只の同じくらいの子だったみたいだ。 それにしてもよく似ている気がするのは、僕の勝手な思い込みなのだろうか。 「ひなちゃん、少しお話しようか。」 ひなちゃんは、笑顔でストンと座った。 それから、ヒマワリの話、夏の花や虫の話、ひなちゃんの学校の話、僕の住んでいる街の話などをした。
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