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「ひなちゃんありがと。
わかったから。
ひなちゃんまで泣くことはないだろ。」
そう言ってひなちゃんをそおっと離した。
「ひなちゃん、
すぐには会えないかもしれないけど、必ずまた会いに来るから。」
「うん、でも、いつか…
ひなが陽太おじさんに会いに行くから。
だって、ヒマワリは太陽を追いかけるんでしょ。
だからひなが陽太おじさんに会いに行くの。」
そう言いながらひなちゃんは、また抱きついてきて、驚いた事に、いきなりキスをしてきた。
僕は昨日の帰り道から、ひなちゃんは小学生だからと自分に言い聞かせて、少し壁を作ってしまっていたが、ひなちゃんは軽々とその壁を飛び越えてきた。
ここまで言わせて、その上キスまでされて、自分の気持ちに気付かない奴は大馬鹿野郎だ。
でも、気付いても何をどうするわけじゃない。
せめて、今日、お互いに笑ってサヨナラを言えなきゃいけないと思った。
「わかった、
ひなちゃんが自分ひとりで僕に会いにこれるようになって。お母さんが行ってもいいよと言ったらおいで。
そうじゃなきゃ来ちゃダメだよ。それでもいいかい?」
「うん、ひな大きくなったら絶対、陽太おじさんに会いに行く。」
「よし、わかった。約束はやり直しだ。
ヒマワリが従姉妹の陽菜ちゃんの代わりだよ。
ひなちゃんと僕はヒマワリの前で昔の約束をやり直す。
いいね。」
「うん、陽菜ねえちゃんの代わりにひなが約束するの。」
今度は僕がひなちゃんのおでこにキスをしてあげた。
ひなちゃんは少し照れながらも笑顔が戻ってきた。
時を越え、たとえこの約束が忘れ去られたとしても、僕は今、目の前にいるひなちゃんの笑顔を取り戻すことができただけで充分だった。
見上げると照り付ける太陽と、僕らを見守っているかのようなヒマワリまでもが笑っているような気がした。
end.
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