果たせなかった約束

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果たせなかった約束

おばさんの家には、16時頃に顔を出すといってあるのでまだ時間はある。 お稲荷様の裏からあのとうもろこし畑に行ってみよう。 絶対にまた来るという陽菜ちゃんとの約束を守れず、あれから10年位たってしまった。 彼女も高校を卒業したことだろう。今何をやっているのか、元気にしていればいいけど。 そんなことを考えながら歩いていたらとうもろこし畑が見えてきた。 たしかこのあたりから入って、奥の方に進んでいくと、そう、昔見たヒマワリの群生地に出た。 昔と同じように高くて立派なヒマワリが咲き誇っていたが、 昔見た印象の方が大きく感じられたのはさすがに自分も成長し、大きくなったということなのだろう。 適当なところに腰を掛け、しばらくヒマワリを眺めていた。 夏になりヒマワリを見るたびに陽菜ちゃんのことを思い出していた。 あれから会えなくなったけど、会っていたらまた同じように過ごせたのだろうか。 今なら連絡先を交換する術もあるけど、あの当時はまだ小学生だったから別れ際の口約束だけしかできなかったし、それに、お互いの苗字も教えあっていなかった。 最後になった日も本当はもう一日会えると思っていた。 できれば今回、話ができたら一言謝りたいと思っている。 でも、高校卒業と同時に他の土地に行ってるかもしれない。 それに、あれから約10年、お互い変わっているだろうから会っても判るかどうか。 それより、覚えていないかもしれないな。 そんなことを考えながらふと左を見てみたとき、 まるで雷に打たれたような衝撃を覚えた。 ひとりの少女がこちらを見て立っていたのだ。 その少女は麦わら帽子に白いワンピース姿で、 大きなヒマワリを抱えていた。 僕には陽菜ちゃんにしか見えず、まるで10年前に戻ったような感じを受けた。 少女が、きびすを返してとうもろこし畑の畦道を小走りで掛けだした。 無意識に立ち上がり後を追ったが、すぐに見失ってしまった。 もっとも、本気で追いかけたわけじゃない。 僕はもう小学生じゃないし、あの子も陽菜ちゃんのわけじゃない。 まあ、いいきっかけになったのでそのままおばさんの家に向かった。
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