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「おい!場所は教えたんだ、もう息子は解放してくれ!」
唐突に少年の耳に父の声が届いた。
「デストーニさんよ、そうはいかねえよ。
なんたってあんたには前科があるからな。
分かるだろう、もし今あんたの息子を解放しちまったら、あんたを脅す材料がなくなっちまう。どうやら自分の命よりはあのお宝は重いみたいだからな」
父の悲痛な叫びにも親玉は耳を貸さなかった。
「ん~!、ん~!」
少年は父に声を掛けようと叫んだが当然声にはならなかった。
「おい、口くらい解いてやれ」
親玉は気が変わったのか子分にそう命令した。
「兄貴いいんですかい?」
「此所でいくら叫ばれても、誰も気付きやしねえよ」
親玉は殊更気にした風もなくそう言った。
程無くして少年の猿ぐつわが解かれる。
「父さん!父さん!」
少年は何を言うでもなく只そこに居るであろう父を呼んだ。
「おぉ、アロイ。
何処か痛い所は無いか?」
父はこんな状況だが息子の元気な声を聞いて少し安心したようだった。
「うん。大丈夫
そんなことより母さんは?傍に居るの?」
少年が先程の賊の会話を理解出来れば、母が殺されている事に気付けただろうが、こんな状況であることも、重なり少年は理解して居なかった。
「……済まない、アロイ。
母さんは」
「殺しちまったよ、この手でな!
ヒャーッハッハッハ!」
子分は、父の言葉を遮る様に少年の耳元で笑いながらそう言った。
「母さん…が、殺された」
幼い少年であったが殺されたの意味が理解出来ないほど子供では無かった。
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