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子分の足が顔で擦れ、目隠しが動き、ようやく少年は自分が洞窟に居て、父に剣が突き刺さっている事を理解した。
そして洞窟の入り口から物凄い勢いで此方に向かって来る、村で一度見たことのある執行官の法衣を着た青年が居ることを。
「なんだおま」
「問答無用!」
少年に剣を突き立てようとした男に執行官の男は何も聞かずに首をはねた。
「ふん!やぁ!」
残りの二人も声を挙げ、防御をする隙も与えられず絶命した。
「大丈夫か!直ぐに縄を解く」
青年は先程とはうって変わって、落ち着いたものだった。
「そんな事より、父さんを」
自分の拘束を解くよりも先に父を助けて欲しい。少年はそう思った。
しかし
「済まない。君の父上はもう」
そこで執行官の青年は言葉を切ったが、それで理解出来てしまう程、その青年の言葉は重かった。
「だが、まだ息はある。
お父さんとの最後の会話だ出来るだけたくさん傍居るんだ。
ほら、解けたよ」
足と手の縄が解けると、少年は足が痺れているのもお構い無しに駆け出した。
案の定、転びそうになっていたが、少年にはそんなことはどうでも良かった。
「父さん!父さん!」
少年は腹に剣が突き刺さり力無く倒れている父の片を揺すった。
もう一度抱き締めて欲しくて。もう一度笑って欲しくて。
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