新部長の苦悩

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それも前島チーフが クライアントとの打ち合わせで 外回りに出た瞬間。 ブラウスのボタンを すかさずひとつ外してから 東雲部長のデスクに 向かって行く吉野。 「部長、聞きたい事が あるんですけど…」 じっと吉野を観察してみたら わざわざ前かがみになって 胸元を見せつけるかのような 吉野の姿に、さすがの 東雲部長も眉間にシワ寄せてるし。 「吉野、胸元開きすぎ。 プランナーは身だしなみから しっかりしないとダメだろう」 厳しい瞳で注意する 東雲部長はさすが 前島チーフ一筋やな。 そう思ったのもつかの間。 「すみません…」 半べそをかいた吉野に オロオロする東雲部長。 「あ…いや泣かなくても…」 …あかんわ。 あの人本来の優しさが 顔に出とるがな。 あまりにその行動が目について 相変らずお節介な俺は 社員食堂の片隅で 一人でポツンと食事を取ってる 吉野の前に腰かけた。 「なぁ吉野。 お前、何考えとんねん」 「何がですか?」 「知っとるやろ? 東雲部長は前島チーフと 婚約しとるんやで? 憧れだけならまだしも 胸元を見せるとか みっともない事は やめときや」 その言葉におしとやかな 雰囲気だったはずの吉野の目が… …鋭く変化した。
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