新部長の苦悩

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「私… そんなみっともないですか?」 「みっともないやろ。 勝てもせえへん勝負仕掛けたって 自分が惨めになるだけや。 吉野は若いし可愛いんやから もっと他に目を向けた方がええ」 一応優しさなんてモンを 掛けてやったつもりだったのに。 「…橋本先輩って そういう人だったんですか」 挑発的に返って来た声に 口をポカンと開けてしまった。 「はぁ?なんやねんそれ」 「情けないですね。 もっと橋本先輩ってイケイケだと 思ってたんですけど。 勝てないって思ったら 身を引いちゃうんですね」 カチンと来た。 なんやねん、 どいつもこいつも。 お前は美杏の日本バージョンか。 そんな俺に吉野は容赦なく 鋭い瞳で言葉を投げつけた。 「欲しいものは欲しい。 例え誰かのものだったとしても 自分が欲しかったら手に入れる。 それのどこがいけないんですか?」 「あかん」 「だからどうして?」 「あかんものはあかんのや」 「なんか幻滅です。 橋本先輩もストレートに 物事を言うから素敵だなって 思ってたのに。 …偽善者なんじゃないですか」 そう捨て台詞を吐いた吉野は 呆れたように食器を持って 席を立った。
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