新部長の苦悩

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不愉快そうに席から 離れて行く吉野に 俺はもうそれ以上 何も言えなかった。 悔しいけど吉野が 言った通りで今の俺は 根性なしの偽善者かもしれん…。 せやけど小野部長を 一途に思い続けていた 千夏を見ていて… 俺なりに男気を 見せたつもりやった。 平気な顔して嘘ついて、 小野部長の背中を押した あの忘年会の夜。 本当の事を言えば、 大浴場の湯船の中で 俺は男泣きしたほど 千夏が好きやった。 欲しくて欲しくて 堪らなかった千夏やったけど… 彼女が笑ってくれるなら 俺はそれでいいとおもたんや。 目を閉じれば今でも浮かぶ 千夏の笑った顔。 俺… ホンマに千夏を心から 消せる日が来るんやろか。 そんな事を思いながら すっかり冷めてしまった 味噌汁をズズズとすすった。 …あかん。 感傷に浸ってる場合やない。 あの和製美杏を何とかせねば。 あの人たちの邪魔を するようなオナゴは 俺が排除してやらんと。 だってな、香港に発つ時に 小野部長に言われたんやで。 『東雲と前島さんの事を よろしく頼む。 いつか俺の後を継げるのは お前だと思ってるからな』って。 小野部長の期待に応えな あかんのや俺は。
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