新部長の苦悩

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その日、仕事を終えて 帰宅するとポストに入っていた その手紙を見て俺は ますます落ち込む事になった。 何でかって? そりゃ落ち込むやろ。 少し大きめのその封筒には 今でも俺の心に住み着いている 千夏と小野部長の結婚式の 招待状が入っていたんやから。 「小野部長も、やっぱ鬼やな」 ポツリと呟いて階段を登る。 たかが10段ほどの階段なのに やけに足が重く感じて 肩までがガクリと落ちた。 何で俺まで呼ぶんやろ。 東雲部長と前島チーフだけで ええやんか。 …せやけど千夏の花嫁衣裳を 目の当たりに見たら この未練も打ち消す事が 出来るやろか? 部屋の電気をつけて 床に寝転がりながら その封筒をぼんやりと眺め 大きくため息を吐き出した。 頭の中に繰り返し響く 今日の吉野に言われた言葉。 『偽善者』 …そう言えば昔見た映画に 教会から花嫁を奪って 逃げるなんてのがあったっけ。 あんな事出来るんは お互いが好き同士の場合だけやろ。 片想いで花嫁連れて逃げたら 誘拐犯になってまうがな。 意味不明な事を思いながら 小さく笑った。 …千夏… 元気にやっとんのかなぁ…。
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