新部長の苦悩

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「いや… どうしてって言われても… 俺は前島チーフと 結婚決まってるし 彼女以外となんて 考えられないから」 困惑した表情の東雲部長に すがるような瞳を向ける吉野。 「だから結婚したっていいって 言ってるじゃないですか。 好きなんです! 大好きなんです! 部長じゃなきゃ嫌なんです!」 「吉野。 気持ちは嬉しいけど無理だから。 悪いが離れてくれないか?」 「嫌ですっ! 一度だけでもいいですから 抱いてくれなきゃ この会社辞めます!」 …まるでガキやんけ。 呆れ果てながら歩みを進めようと 思った瞬間。 ふわりと漂った甘い香り。 「橋本君、どうしたの?」 その声に俺がビクリと 肩を揺らしてしまった。 「…あ…前島チーフ」 「誰かと、 かくれんぼでもしてるの?」 笑いながら首を傾げる 前島チーフの姿を見つめながら 変な汗が滲んで来た。 「…なんやらこの先で ガラの悪い人らが 揉めとるんですわ。 せやからチーフは 行かん方がエエで」 必死に言い訳を並べたら せっかくチーフの前では 標準語を話して頑張ってたのに すっかり関西弁が出てまった。
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