新部長の苦悩

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「え?ガラの悪い人? どこどこ??」 俺を押しのけようとする 前島チーフを慌てて阻止する。 アンタは、やじ馬か! しかし焦った俺が取った行動は チーフを抱きしめてしまうという とんでもない形になった。 「ちょ…橋本君!」 「あかんって言っとるやろ!」 とその時、 後ろから聞こえた鬼の声。 「…橋本… お前、何やってんだ?」 振り返った俺の目に映ったのは 色素の薄い瞳を吊り上げた… ……東雲部長。 あかーん! それこそ俺の頭の中に響いたのは 某お笑い芸人が叫ぶ セリフそのものやった。 「ちゃうねん! 部長!これはちゃうねん!」 慌てて前島チーフから 離れて両手をブンブンと 振って否定する俺を 東雲部長の影から ニヤニヤと笑みを浮かべながら 覗き込む吉野の不敵な表情が 目に入って更にパニクる俺。 けれど… 前島チーフは笑いもせずに じっと吉野に視線を向けていた。 「…遥斗こそ何をしてるの」 冷たく言葉を吐いた 前島チーフはきゅっと 唇を噛みしめると そこからクルリと背中を向けて 足早に去って行く。 …え? 何でや?? 慌てて向けた視線の先。 よくよく見たら… 吉野の手が東雲部長の手を しっかりと握りしめていた…。
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