新部長の苦悩

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しばらくして 宴会場に戻って来た 東雲部長はしっかりと 前島チーフの手を握っていて さっきまではお互いが全く 気にし合っていなかったくせに 自分の隣に前島チーフを 座らせた東雲部長の姿に 俺は込み上げる笑いを 堪えるのが必死やったけど。 すっかり大人しくなった 吉野は勝田課長の隣に まるで保護されてるみたいに 座らされていて。 その後は何事もなく 歓迎会は終わりを迎えた。 「橋本!二次会に行くぞ!」 と、泥酔しながら盛り上がる グッチーをサラリと交わして 帰ろうとした時、 ツンとつままれた 俺のスーツの袖口。 振り返った先には 顔を赤くした吉野の姿。 「…なんやねん」 俺の質問に吉野は 更に顔を赤くして 恥ずかしそうに俯いた。 「あの…さっきの…」 「は?」 「…さっきの続き…」 …マジか。 唖然とする俺に吉野は すっと近づくと耳元に 口を寄せて呟いた。 「自分で誘ったくせに」 …そりゃそーやけど…。 まさかホンマにその気に なるなんて思ってへんかったし。 「あ…いやあれは… 俺も酔っとったから…」 慌てて言い訳した俺に 吉野の瞳が鋭さを増す。
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