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「分かるよその気持ち。
私も泣きそうだもん」
…え?
思わず覗き込んだ美杏の瞳が
微かに揺れながら
スポットライトに照らされている
小野部長に向けられた。
「お前…小野部長の事…
本気やったんや」
「そりゃそうでしょ。
東雲部長も素敵だけど…
小野部長は私の目標だもの。
あの人と初めて会った日にね。
東雲部長と前島チーフの
邪魔をするなって怒られたの。
だけど東雲部長を
手に入れられなくても
お前には可能性っていう
宝があるじゃないかって。
その言葉の中に
すごく優しさを感じたわ。
頭ごなしに叱るんじゃなくて
香港で働いている私の仕事も
本社勤務でありながら
きちんと見ててくれて
荒削りだけど光るものを
お前は持ってるぞって。
そう言ってくれたんだ。
その瞬間から私は
小野部長みたいな
デザイナーになりたいって
心から思った。
でも…
やっぱり遠くにいた私より
近くにいた千夏さんの方が
断然有利だったしね。
何より大好きな小野部長が
ああして幸せな顔を
してくれてるのが嬉しいから。
結局好きですって言えなくて
ファンですなんて
言っちゃったけどさ」
そう言ってクスッと笑った
美杏にまた俺の胸がトクンと
小さく鼓動した。
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