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翌朝。
結局スーツのまま
眠ってしまった俺は
ムクリと起き上がった。
鳴り響くベッドサイドに
投げておいた携帯電話。
微かに痛む頭を抱えながら
それに手を伸ばす。
『やっと起きたか。
20分後にチェックアウトして
出かけるから早く支度しろ』
…なんで東雲部長は
こんなに元気なんやろ。
観光とかどーでもエエんやけど。
そう思いながらも
スーツを脱ぎ捨て
慌ててシャワーを浴びて。
急いで髪を整えていると
また東雲部長の声。
「橋本、まだかー?」
勘忍して欲しいわ…。
そうは思っても、
初めての香港だけに
ここで捨てられたら俺、
日本に帰れへんし。
しぶしぶ開けたドアの前には
爽やかに微笑む東雲部長と
今日もべっぴんな前島チーフ…
…と…
ブスッと膨れる美杏。
…え??
唖然とした俺に、
悪魔のような笑みを見せた
東雲部長が言葉を吐いた。
「俺と香織は、
香港支社長の冬木さんの家に
行って来るから。
香港観光は美杏に連れてって
貰う事にした。
飛行機の時間に遅れるなよ」
…マジか…。
ニヤリと笑って、
前島チーフの手を握り
そこから去って行く東雲部長。
…あの人…
やっぱ鬼やわ…。
そう思いながら俺は
大きくため息を吐いた。
【Episode Z 第2話に続く】
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