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はぁ、はぁ、はぁ…
真っ赤な夕日で朱く染まった道を幼い私は息を切らしながら走っていた。
後ろから徐々に確実に追ってくる黒い影。
その影はまるで腹を空かせたケモノのような目で私を追ってきている。
「あっ!」
逃げるのに夢中になっていた私は足元の段差に気付くことができず、両手を前に出した。
地面の固いざらざらした痛みが両手足を打つ。
うっすらと血もにじみだした。
後ろを振り返った瞬間、黒い影私に蔽いかかってきた。血走った瞳。もう…。
私はぎゅっと目をつむった瞬間。
ダアン、と大きな音が鳴り響いた。
音に驚きカラスが空に飛び散る。
「だいじょうぶ?おそくなるとあぶないよ。さ、帰ろう?」
差し出された手。音が静まりそっと目を開けた私がはじめに見たのは優しい手だった。
黒い影はもういない。
目の前に立つ、自分と同じ年頃の男の子。
「ありがとう。」
私はこの子を知っている。
いつも私を守ってくれる優しい子。
私はその手を取り、二人で手をつなぎながら家路についた。
それから数年後。
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