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助走をつけて、足で思い切り踏み切って。
修平に届くようにと前へ前へと伸ばした手は、一瞬跳び箱に触り、そのまま宙に浮いた。
ドサッッ───、
耳に響いた派手な音と身体を支える逞しい腕。
「…………紗希。目は開けとけ。」
言われて目を閉じていたことに気付いた。
「あ、修平、大丈夫?」
尻もちをついた修平は片手で床をつき、もう片方の手で修平に全身で体当たりした私を受け止めてくれていた。
「大丈夫。紗希、跳べたな。」
ニコリと笑う修平に、思わず後ろを振り返った。
今まで決して自分の背後にくることのなかった跳び箱が、私の視界に入る。
「あ、ホントだ。わ……ぁ、跳べ、た?」
半信半疑で呟く私に、修平は「やったな。」と笑顔をくれた。
「南谷。あれは跳んだというか、突撃というか。もう一回ちゃんと跳んでみろ。」
まったく教師の前でイチャイチャしやがって……、ブツクサと呟き先生は私と修平を引き剥がす。
「えっ、」
もう一回?
それで出来なかったら、また続くの?
せっかく跳べて嬉しかったのに。
弾んだ気持ちが瞬く間に萎れて項垂れると、
「せんせー、今日はもういいっしょ。跳び箱は要はこっちから、こっちに移動すればいいんでしょ?」
指で踏み切る側から今私達がいる着地点へと弧を描き、修平が先生に同意を求める。
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