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「スケジュールさえ調整していただければ、もう一案、考えてみます」
言い切った羽村澪に、辻さんと内藤さんは首を振る。
「……本当に、大丈夫ですか? 僕は十分、魅力的な提案をいただいたと思っているんですが……」
「ああ。辻の言う通りだ。無理をさせるつもりはないんだよ、まだこのタイミングだし」
本当は、欲しいくせに。
もう一案。魅力的な餌よね。
それも長瀬恭のデザインよ? 食いつかないはずがない。
口では彼女を気遣っているけれど、本当はどんなものが上がってくるのか、気になっているはずだわ。
彼らの言葉を受けた羽村澪は、臆面もなくにっこり笑った。
「ええ、必要なら、それに応えるのが私たちの仕事だと思っていますから」
「……そう、か」
内藤さんが人の良さそうな笑顔で頭を掻いた。
「ウチのが無理言って悪いね、羽村さん。助かるよ」
「いえ、お気になさらないでください」
そうね、それが正解よ。
あなたたちの立ち位置は、私たちからの依頼を受けなければ成り立たないものなのだから。
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