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「どこか、いい制作会社さんを知りませんか?」
神谷先輩にそう持ち掛けたのは、上司からの依頼があったからだ。
私に「女の化粧品だしな。お前もやりたいだろう?」なんて恩着せがましく言ってきたのを思い出す。
ただ、自分が手一杯なだけのくせに。
「女性用の化粧品か……だったら」と言って、先輩はすぐに動いてくれた。
紹介された会社の名前を見ても、特にピンとは来なかった。『+D』か、耳にしたことはあるわね、くらいのもので。
けれど、会議室で対峙したメンバーの中にの一人に、私は目を見張った。
長瀬恭だ。
間違いない。新人賞を獲った、注目の若手。私の好きなあの広告を作った人……!
「御園京香です。はじめまして」
声が震えそうになった。興奮で、かもしれない。
目の前に、メディアを通してしか見たことのなかった憧れのクリエイター。
私がおかしいんじゃない、緊張するのは当然だと思う。
綺麗な顔。柔らかい物腰。理路整然とした説明。落ち着いた声もいい。
……写真で見るより、ずっといい男だわ。
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