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「化粧品の案件、ということでしたよね?」
「ええ。詳しいことは御園の方から…もう始めさせていただいても?」
「大丈夫です、お願いします」
「では」
私が手元の資料を配り始めると、彼の表情も引き締まった。
すごいわ。憧れのクリエイターと仕事ができるなんて。
神谷先輩のおかげだけれど、本当に夢みたいだ。
上司から押し付けられた案件だったけれど、私のやる気は一気に高まった。
今回は、大手化粧品会社の新ブランドデビューにあたり、各媒体に展開する、メインビジュアルの制作が主な依頼だ。
あの素晴らしい広告を作り上げた長瀬恭には、ぴったりの案件だと思う。
ブランド名は、『Me:waku―ミワク―』。
ターゲットは、20代~30代前半くらいの女性。
イメージアイコンはまだ検討中。予算規模も納期も、先方イメージもきちんと伝える。
説明を終えて、いつものように雑談に入ったけれど……妙に目障りな存在を見つけた。
中央に座った女だ。
『はじめまして。+Dのデザイナー、羽村澪と申します』
そんな挨拶をした彼女は、私をまっすぐ見つめてきた。
そういえば、その目も何となく、気に食わないものだったわ。
薄いとわかるナチュラルメイク。
手入れはしているようだけれど、ただまとめただけの髪。
可愛げのない白いシャツにくるぶし丈のパンツ。プレーンなパンプス。
アクセサリーは趣味がいいけれど……それだけだわ。
何なのかしら、この女は。
どうして当然のように、話の中心にいるのかしら。
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