《1》

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  「化粧品の案件、ということでしたよね?」 「ええ。詳しいことは御園の方から…もう始めさせていただいても?」 「大丈夫です、お願いします」 「では」 私が手元の資料を配り始めると、彼の表情も引き締まった。 すごいわ。憧れのクリエイターと仕事ができるなんて。 神谷先輩のおかげだけれど、本当に夢みたいだ。 上司から押し付けられた案件だったけれど、私のやる気は一気に高まった。 今回は、大手化粧品会社の新ブランドデビューにあたり、各媒体に展開する、メインビジュアルの制作が主な依頼だ。 あの素晴らしい広告を作り上げた長瀬恭には、ぴったりの案件だと思う。 ブランド名は、『Me:waku―ミワク―』。 ターゲットは、20代~30代前半くらいの女性。 イメージアイコンはまだ検討中。予算規模も納期も、先方イメージもきちんと伝える。 説明を終えて、いつものように雑談に入ったけれど……妙に目障りな存在を見つけた。 中央に座った女だ。 『はじめまして。+Dのデザイナー、羽村澪と申します』 そんな挨拶をした彼女は、私をまっすぐ見つめてきた。 そういえば、その目も何となく、気に食わないものだったわ。 薄いとわかるナチュラルメイク。 手入れはしているようだけれど、ただまとめただけの髪。 可愛げのない白いシャツにくるぶし丈のパンツ。プレーンなパンプス。 アクセサリーは趣味がいいけれど……それだけだわ。 何なのかしら、この女は。 どうして当然のように、話の中心にいるのかしら。 .
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