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気に入らない、と思ったのは直感で。
その理由はすぐにはわからなかった。
でも、雑談の中で思い当たることになる。
「神谷先輩とはどんなお仕事を?」
「いろいろだよ。いつも助けてもらってて、頭が上がらないくらい」
「そんな、こちらこそいつもお声をかけていただいて…神谷さんには感謝してるんですよ」
「羽村さんにそう言ってもらえると有り難いな。いつも急すぎる! とか、納期が短い! とか怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしてるからね」
「そんなこと、言ったことないですよね!?」
「思ったことはあるんだよね?」
「う、えっと…まあ…それは…」
羽村……という女と楽しげに会話をする神谷先輩に、私は衝撃を受けていた。
こんな神谷先輩、初めて見た。
ちょっと意地悪な顔をしているのに、瞳は優しい。
憧れていた先輩が見せるほぐれた空気に、私は心の中でチリチリと何かが燃えるような感覚を抱いていた。
それと同時に、浮かび上がる疑念。
「もしかして……羽村さんって、神谷先輩の彼女さん、ですか?」
「はっ!?」
「えっ!?」
素っ頓狂な声が返ってきて、安堵する。
やっぱり。違うわよね、良かった。
そりゃそうよ。神谷先輩には似合わないわ、こんな人。
すぐに理解したけれど、私は続けた。
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