《1》

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  気に入らない、と思ったのは直感で。 その理由はすぐにはわからなかった。 でも、雑談の中で思い当たることになる。 「神谷先輩とはどんなお仕事を?」 「いろいろだよ。いつも助けてもらってて、頭が上がらないくらい」 「そんな、こちらこそいつもお声をかけていただいて…神谷さんには感謝してるんですよ」 「羽村さんにそう言ってもらえると有り難いな。いつも急すぎる! とか、納期が短い! とか怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしてるからね」 「そんなこと、言ったことないですよね!?」 「思ったことはあるんだよね?」 「う、えっと…まあ…それは…」 羽村……という女と楽しげに会話をする神谷先輩に、私は衝撃を受けていた。 こんな神谷先輩、初めて見た。 ちょっと意地悪な顔をしているのに、瞳は優しい。 憧れていた先輩が見せるほぐれた空気に、私は心の中でチリチリと何かが燃えるような感覚を抱いていた。 それと同時に、浮かび上がる疑念。 「もしかして……羽村さんって、神谷先輩の彼女さん、ですか?」 「はっ!?」 「えっ!?」 素っ頓狂な声が返ってきて、安堵する。 やっぱり。違うわよね、良かった。 そりゃそうよ。神谷先輩には似合わないわ、こんな人。 すぐに理解したけれど、私は続けた。 .
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