《1》

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  色気も何もない彼女のスタイルは、とても不愉快だった。 『女ですけど、一人前に仕事してます!』ってわざわざ主張して。 男と同じように、いいえ、それ以上に頑張っている私! ってアピールしているみたいだわ。 女として仕事をするならそれなりの装いがあるでしょう。 華やかでも派手過ぎず、女らしさを見せるような。 そう、私みたいにね。ああ、造形は別だけれど。 それでも媚び方はいくらでもあるじゃない。 事務の子達なんかもやっていることよ。 露出にしろメイクにしろ、工夫して女を作ってる。 男から上手く愛される術を、身に付けているからかもしれないわ。 別件の電話対応で神谷先輩が出ていった後も、彼女は自ら話の中心にいた。 私からの質問にはきちんと答え、笑顔も見せる。 ハキハキとした口調はきっと仕事をする上では大事な要素なんでしょうけれど……私はあなたと話したいわけじゃないのよ。 その隣に座る、長瀬恭と話したい。 彼となら建設的な話ができるに違いないわ。 きっと素敵なものが作れる。確信に近いものを抱いていた。 なのに。 .
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