《1》

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  苛立ちを抱えたままで、席に戻る。 と、すぐに遠くから歩み寄ってくる長身の男性。 「ああ、御園。中座して悪かったね」 「神谷先輩」 「どう? +Dさんの印象は?」 にっこり、いつものように優しく微笑む憧れの先輩。 その笑みに癒されながら、私も笑顔で答える。 「長瀬恭さんがいらっしゃる会社だったんですね。私、彼の作品がすごく好きで……ご一緒できて嬉しいです」 「そっか、長瀬さんのことは知ってたんだね」 「はい。彼とならきっと素敵なものができると思います」 自信たっぷりに頷くと、神谷先輩は「そっか」と言ってくれた。 神谷先輩おすすめだもの、ハズレなわけがないわ。 けれどすぐ、彼は首をひねった。 「でも……どうかな、今回は」 「え?」 「何となく、羽村さんがメインで動くんじゃないかなと思ってね」 彼女の名前が出た途端、穏やかで、慈しむような笑みを浮かべる。 敬愛する先輩の、隠しきれないその表情が、また私の火に油を注ぐ。 .
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