2522人が本棚に入れています
本棚に追加
「念のため、羽村さんと宮野さんのアドレスを長瀬さんにメールしていただくよう、お願いできますか?」
『え、あの、お名刺いただいてますし、私からお送りしますよ?』
……どこまで鈍いの、この女。
あなたとはこれ以上関わりたくもないのよ、私は。
普通、ここまで言ったらわかるでしょう?
察するという能力が欠如しているとしか思えない。
動物以下の理解力ね。信じられないわ。
それとも何、この仕事から降りたくない理由でもあるのかしら?
だとしても、私には何の関係もないわ。
さっさと諦めてもらうしかないのよ。
舌打ちしたくなるのを堪えて、私は電話の向こうの相手を睨むように言い放つ。
「いえ、結構です。知らないアドレスからのメールは受け取らない主義ですので。では、よろしくお願いしますね」
一息に言い切って、即座に通話を切った。
最後に『は……』なんていう間抜けな声が聞こえたような、聞こえなかったような。どうでもいいけれど。
.
最初のコメントを投稿しよう!