《1》

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  「……え~そんなわけないよね~?」 「御園さんが上手くいかないんだったら私たちなんて、ねえ~?」 「ほんとほんと~」 その歪んだ顔じゃ、そうでしょうね。 ……とはもちろん言わずに、私はにっこり微笑んだ。 「ごめんなさい、打ち合わせが入っているから、お先に」 そう言って、彼女たちのおしゃべりの隙間をそっと抜ける。 見せかけの自虐ネタに付き合っていられるほど、ヒマじゃないのよ。 抜け出た化粧室、おそらく私がいなくなった途端、彼女らは私の悪口で盛り上がるのだろう。 そんなことしてるから、顔が歪んでいくってこと、わからないのかしら? ……ま、どうでもいいわ。 醜い女同士の争いなんて、関わらないのが一番よ。 先月、奮発して買った華奢なヒールが美しいパンプスをカツカツ鳴らして、私は席へと戻った。 .
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