《1》

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  周知の事実だけれど、私はコネ入社だ。 鳳凰堂の上役にいる叔父の誘いがきっかけだった。 言われるがまま書類を提出し、形だけの筆記試験を受け、面接をクリアし、晴れて社員となった。 ここまではわかっていたこと。予想外だったのは、配属先だった。 叔父は、両親以上に私に甘い。 だから適当な部署で、適当に仕事をこなしながら、適当に恋愛して、時折見合いさせられたりしながら過ごすんだと思っていた。 どうせ退屈な仕事を繰り返すだけの日々のなら、楽な方がいいのかもしれない……なんて思っていたのも事実。 ……なのに、私は制作に近い現場に配属された。 意外だった。 確かに事務や秘書でお茶汲みなんかするのは嫌だと言ったけれど、まさかこんなにハードな部署に入れられ、きっちり仕事をさせられるなんて、思ってもみなかったからだ。 ある程度覚悟していたけれど……結局、私は小さな仕事しか振ってもらえなかった。 肩すかしを食らった気分だ。 『上役の関係』だと知れ渡っているのだから当然かもしれない。 .
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