《1》

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  たいしてやる気もなかったから、それはそれでいいと思っていた。 要領よくこなすことは得意だし、誰かに遅れを取るようなこともなかった。 私でも、私じゃなくてもいい仕事。 そんなのに労力を割くなんて、馬鹿馬鹿しいとさえ思っていたから。 同僚から、距離を置かれていることもわかっていた。 男は仕事では関わらないくせに、業務以外の色を帯びた視線しか投げてこない。 女は嫉妬やひがみを隠さず遠ざける。 これもいつものことだ。どこに行っても同じ。私を取り巻く環境は、何も変わらない。 ……だけど。 一人だけ、私を煙たがらずに、真摯に向き合ってくれた人がいた。 .
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