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―――「産まれましたよ、棚橋さん。はい、男の子。」
まだ赤黒いふにゃふにゃの赤ん坊を、細目の助産師が沙希に手渡した。部屋にいた医者や看護師が、次々に沙希へ労いの言葉をかける。
「…たくちゃん見てぇ。可愛いかね。」
赤ん坊を胸に抱き、目に涙を浮かべる沙希は、驚いたことにもう母親の顔をしていた。
「…ああ、可愛いか。」
わあわあと泣き喚く赤ん坊の、何かのおまけのように小さな鼻の形は、俺のそれとそっくりな気がした。
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