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連絡を受けたのは、新築の住宅の上棟式の準備をしていた時で、携帯で沙希の母親から連絡を受けた途端、俺は屋根から落っこちそうになった。
「タク、お前がそんなに慌ててどがんすっとや!」
焦るあまり、道具箱を派手にひっくり返してしまった俺を見て、棟梁の重昭さんが笑いながら声をかける。
「棚橋、奥さん初めてだろ。ちっとやそっとじゃ生まれんて。落ち着いて、ちゃんと着替えてから行けよ。」
現場監督の山下さんに言われて、俺は少しだけ落ち着きを取り戻した。
仲間に仕事の途中で抜けることを詫びて、取り敢えず家へと急ぐ。
「先ずは、シャワー。それから、着替えだ。」
俺は少しでも落ち着こうと、呪文を唱えるように、心の中で何度もその言葉を繰り返した。
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