Birthday cake

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自分で引き戸を開けLDRの中に入ると、沙希はすでに分娩台に両足を開いて寝かされていた。 「…たくちゃぁん。」 眉毛を下げた情けない顔で俺の名を呼ぶ沙希の目に、さっきまでの獰猛さは微塵もなく、ただただ自分を襲う痛みへの恐怖と、これから起こることへの不安に怯えきっていた。 「手ぇ、握っとって。」 力ない声で乞われて、そっと沙希の汗ばんだ手を取る。 「…沙希、頑張れ。」 俺は、沙希の掌を両手で優しく包み込むと、祈りを捧げるように力を込めた。
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