- 1章 -

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 街道沿いのラブホを出ると、薄っすらと西の空がまだ明るい。  隣接するパチンコ屋の駐車場に向かって歩きながら、着信履歴の一番上にある”相原寛之”をタップした。  「ヒロちゃん、何?」  「おう芽衣、遅かったな。今どこだ?」  「海老名。これから帰るよ」  「じゃ、ワサビ買ってきてくれ」  「あいよ」  うちのマンションの1階はスーパー。  そして我が家はその2階なのだけど。  腹回りを気にしてる割には運動する気がないのねヒロちゃん。  「今日お刺身なの?」  「ああ、美穂子が鯛を釣ってきたんだ」  近所で居酒屋をやってる美穂子さんはバツイチの38歳。  店が火曜の定休日だから、客との付き合いで釣りに出かけていたのだろう。  「今さばき終わったところだ。売るほどあるから心配するな」  「ふーん。じゃあ、政やんとバッタリ会ったから連れてくよ」  「おう、ワサビ忘れないように気をつけてな。早くだぞ」  娘よりもワサビを心配したセリフで電話が切れた。
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