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叱られると思ったけれど、そうではなかった。
ホテルから一人で出てきたあたしを見て、政やんはピンときたのだろう。
悲しみに暮れた表情の政やんに、何の為にウリなんかしてる? と問い詰められた。
直ぐには答えられなかった。
自分でも何の為だかわからなかった。
「お金の為かな」
長い時間考えたあと、そう答えていた。
あたしが小さい頃、ヒロちゃんは仕事で夜家を空けることが度々あった。
けれど一つ違いの純也はいつも側にいたし、政やんや他の大人達も暖かく見守ってくれた。
でもどこか物足りなかった。
母親が居ないことは我慢できたけれど、ヒロちゃんにいつも側に居て欲しかったのだと思う。
大人達からは「ヒロちゃんは芽衣たちのためにお仕事頑張ってるんだよ」と言い聞かされた。
分かっていた。
だから漠然と、お金が沢山あればヒロちゃんは働かなくていいんだ、と思っていた。
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