- 1章 -

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 叱られると思ったけれど、そうではなかった。  ホテルから一人で出てきたあたしを見て、政やんはピンときたのだろう。  悲しみに暮れた表情の政やんに、何の為にウリなんかしてる? と問い詰められた。  直ぐには答えられなかった。  自分でも何の為だかわからなかった。  「お金の為かな」  長い時間考えたあと、そう答えていた。  あたしが小さい頃、ヒロちゃんは仕事で夜家を空けることが度々あった。  けれど一つ違いの純也はいつも側にいたし、政やんや他の大人達も暖かく見守ってくれた。  でもどこか物足りなかった。  母親が居ないことは我慢できたけれど、ヒロちゃんにいつも側に居て欲しかったのだと思う。  大人達からは「ヒロちゃんは芽衣たちのためにお仕事頑張ってるんだよ」と言い聞かされた。  分かっていた。  だから漠然と、お金が沢山あればヒロちゃんは働かなくていいんだ、と思っていた。
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