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薄暗い雲の立ち込めた典型的な梅雨空は、只でさえ憂鬱な月曜の朝を更に憂鬱にした。
霧吹きを吹いた様な雨が、上から落ちてくるのではなく空中に漂い体にまとわりつく。
差すのが無意味に思え、傘をたたんだ。
小田急のガードを潜るところで遥と一緒になり、昨夜のテレビの話しをしながら学校へ向かった。
悪戯の効果が気になったけれど、純也のファンクラブの数人が冷たい視線をよこす程度で、学校中の噂というわけではなさそうだ。
ファンクラブの中だけで留めているのだろう。
昼休み、遥と向い合って弁当を広げたところに突然声を掛けられた。
「相原!一緒に映画見にいかないか?」
たしかサッカー部だったか、同じクラスの加藤だ。
割りとイケメンで明るく面白く、女子に人気があるのは知っていた。
しかも遥からの情報で、どうやら亜沙美が思いを寄せているらしいと聞いていた。
「お願いします!!」
いや、声がデカ過ぎるでしょ。
テレビのお見合い番組の様に頭を下げて右手を出してくる。
加藤の仲間がニヤニヤしながら後ろで見守り、クラス中も注目している。
じっとこっちを睨む亜沙美と目が合った。
「映画かぁ。うんいいよ」
加藤の仲間が指笛を鳴らし、クラス中が拍手をした。
もちろん純也のファンクラブの連中を除いて。
一瞬驚いた表情を見せた亜沙美が、更に険しい表情をしてこっちを睨んでいた。
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