物語 - 2章 - の続き

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 丸2日以上願い待ち続けた政やんとの対面に、あたしの体は思ってもいなかった反応を示した。  あたしの心が衝撃を受け止めるキャパシティーを超え、それに連鎖して体が異常をきたしたのかも知れない。  生物である人間の体は、死んでそのままにしておけば必ず腐敗してしまう。  だからこそ無残に腐敗して悪臭を放つ前に、綺麗なままの姿を目に焼き付けて別れるのだろう。  しかし愛する者が焼かれ、骨と灰になってしまうことは、とてつもなく辛いものに違いない。  それでも、あんなところで一人凍らされている政やんを思うと、もういい、早く楽にしてやりたいと思った。  夕方になりホールに明かりが灯ると、遠藤さんを始めとする組員たちとあたしたちはそこに集まった。  榊組の組長は現在塀の中で、組の責任者は事実上遠藤さんだ。  喪主は遠藤さんが務めることになっていた。  「遠藤さん。これ、政やんが好きだった唄なんです。かけてもらっていいですか?」  組員たちが注目した。  「おう。坊主が木魚叩いてる間もエンドレスでかけてやれ」  いやそれは。  あたしは午前中に買っておいたシュガーソウルの唄うガーデンのCDの内1枚を、斎場の担当者に渡して頼んだ。  直ぐにかかった曲に、その場にいた全員が聞き入り、1度目の再生が終わると遠藤さんが言った。  「いい唄だな」
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