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丸2日以上願い待ち続けた政やんとの対面に、あたしの体は思ってもいなかった反応を示した。
あたしの心が衝撃を受け止めるキャパシティーを超え、それに連鎖して体が異常をきたしたのかも知れない。
生物である人間の体は、死んでそのままにしておけば必ず腐敗してしまう。
だからこそ無残に腐敗して悪臭を放つ前に、綺麗なままの姿を目に焼き付けて別れるのだろう。
しかし愛する者が焼かれ、骨と灰になってしまうことは、とてつもなく辛いものに違いない。
それでも、あんなところで一人凍らされている政やんを思うと、もういい、早く楽にしてやりたいと思った。
夕方になりホールに明かりが灯ると、遠藤さんを始めとする組員たちとあたしたちはそこに集まった。
榊組の組長は現在塀の中で、組の責任者は事実上遠藤さんだ。
喪主は遠藤さんが務めることになっていた。
「遠藤さん。これ、政やんが好きだった唄なんです。かけてもらっていいですか?」
組員たちが注目した。
「おう。坊主が木魚叩いてる間もエンドレスでかけてやれ」
いやそれは。
あたしは午前中に買っておいたシュガーソウルの唄うガーデンのCDの内1枚を、斎場の担当者に渡して頼んだ。
直ぐにかかった曲に、その場にいた全員が聞き入り、1度目の再生が終わると遠藤さんが言った。
「いい唄だな」
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