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6時になり、お坊さんのお経を聞いて焼香を終えると、弔問客の相手を組員達に任せ、あたしたちは通夜振る舞いの席に移動した。
8つ並んだ座卓のうち一番端の席を、政やん以外のいつものメンバーで囲んだ。
組の上部組織である稲岡組や他関連団体からの弔問客は思ったよりも少なかった。
組同士の抗争で死んだならばもっと多いのだろう。
でも相手が他の組のヤクザであることは、まだあたししか知らないのだ。
ヒロちゃんがどこからか白波のボトルを持ってきて言った。
「政の思い出話しを肴にこれでも飲むか」
それぞれが口にしていたビールを辞め、5人ともロックグラズに注いだ白波を手にした。
「俺らがガキの頃はな、飲み屋にはウィスキーのボトルしか並んでなかったんだ。世間がバブル崩壊とか騒いだ頃だったかな。急に眞露とか鏡月なんて味のしない焼酎を割って飲むのが流行りだしたんだ。芋焼酎が流行ってどこの店でも置くようになったのは更にその後のことだ」
ヒロちゃんが自らの青春だった暴走族時代のことを話し始めた。
当時神奈川では有名だったそのチームは、ヒロちゃんがリーダーで、サブリーダー兼特攻隊長が遠藤さんだった。
1つ年下の政やんは、キレると何をするか分からない危ない奴として、チームの中で浮いた存在だった。
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