物語 - 2章 - の続き

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 「小っちゃい頃って無邪気でさ、すげー高いおもちゃとか買わせてたよな」  「うん。でもある時から気がついて、遠慮したり、安いのを選ぶようになったよね」  「ああ。しつこく本当にこれでいいのか? って聞かれたよな」  「うん。『ヒロさんがちゃんと子育てしてるから俺は甘やかすの専門だ。だから甘えろ』ってね」  そう、あたしたちの頼みを何でも聞いて、欲しがるものは何でも買ってくれて、そして全力で守ってくれた。  小学校の高学年くらいからか、あたしたちは段々と政やんの手から離れていったと思う。  きっと政やんもあたしたちの成長を楽しみに見守っていたはずだ。  それなのに、あたしはまた政やんに甘えた。  その結果政やんは死んだかも知れないのだ。  連中への怒りや恨みとはまた別に、自分が情けなかった。  通夜は交代で線香の火を絶やさないようにするものだと思っていたけれど、1本で一晩中燃え続ける蚊取り線香の形をした線香がありその必要はなかった。  だけど結局外が明るくなるまで、だれもそこを動こうとしなかった。
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