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━━スプリングリット━━
『この大陸を出て世界を見てみたいんだ。だから当分は帰って来れないと思う』
昨晩、そう決意を告げたリーンは朝早くから準備を整えていた。
「リーン、朝食たべていく時間くらいあるだろ?」
「うん、もらうよ」
母がテーブルに皿を並べると、リーンは手を止めて席に着く。
テーブルの上には野菜がたっぷり挟まった3段重ねのサンドイッチに真っ赤な激辛スープが注がれた皿が置かれている。
「いただきます」
そう言ってリーンはゆっくりと朝食を食べはじめる
暫(しばら)く食べることができない母の味をしっかりと覚えるかの様にーー
「…あの鎧は持っていかないのかい?」
朝食を食べ終えたリーンが新調した赤い鎧に袖を通していく最中、母は胸に赤い星がペイントされた片見の鎧に目をやる。
「…うん、思い出を荷物にしたくないしね」
そして振り返ると、少し困ったような笑みを浮かべた。
「それにーーもう小さくて着れないんだ」
ーー旅立ちの朝、リーンはもう19才になる。
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