2人が本棚に入れています
本棚に追加
「この国は女王が存在した前例がない。故に次期王はサフィニアだが、サフィニアに王となる気がないのであれば、第1王子のクルストに嫁がせ、クルストを王とする」
やめてっ。
なんで?なんであたしがクルスト兄様と結婚しなきゃいけないのっ?
あたしはこんなことの為にっ、クルスト兄様と結婚するためにお姫様になったんじゃないわっ。
だってもうこの手は血で汚れているのに……。
泣きたかった。
でも、泣いてはいけなかった。
クルスト兄様との結婚なんて冗談じゃない。
そこからあたしの思考は止まった。
何かに縋り付きたくて、ジェスを探した。
お父様は大臣たちと何かを話してるっぽい。
所詮あたしには関係のないこと。
広間に流れていたワルツの音楽が大きくなっていた。
美しい音色、優雅なメロディは重厚でもあった。
だからなのか、少しだけ気分が高揚していることにあたしは気付かない。
「ジェス」
広間の隅の方で仏頂面しているジェスを見つけた。
黒のタキシードに身を包み、軽く頭を下げられた。
「サフィニア様、今日はお招きいただき、ありがとうございます」
今日のジェスはあたしの世話係ではない。
貴族としてこの場にいる。
最初のコメントを投稿しよう!