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タキシード姿のジェスにあたしは胸を弾ませる。
心が踊るのがよくわかる。
「あの、シュメール様。私のファーストダンスを踊ってくださいませんか?」
俯きながらなんとか言い切った。
心臓がバクバク言ってる。
熱も顔に集中している。
でも達成感に満たされる。
身分の高い家に生まれた女子が初めて舞踏会で踊るワルツは特別なもの。
そうルイ様に教えていただいた。
その為に娘たちは自分を磨きあげて、意中の相手をファーストダンスに誘うのだと。
でもそれをジェスに対して口にしてはならないと、あたしは知らなかった。
「サフィニア様のファーストダンスの相手に選ばれることは、私にとってありがたき幸せ。ですが、申し訳ありません。私ではサフィニアと身分が違いすぎます。今のは、聞かなかったことにします」
馬鹿にするわけでもなく温度のない声は、事実のみを口にする。
そして深々と頭を下げられた。
聞かなかったことってなによ?
ふざけないでよ。
あたしはこの時の為にーー。
人生で初めて我が儘を口にした。
お針子を困らせながらドレスを仕立てさせた。
腰をきつく縛り上げるコルセットが大嫌い。
なのにシャーロット姉様より細く見せたくて、ずっと我慢して付けている。
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