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「くそぅ!…なんで、開かないかな…う~ん!!…くうぅ~ぅ!!」
ガタガタいわせているのだか、一向に、この引き出しは、開かない。
「…こうなったら、仕方ない。
南無南無南無…っと。
親父、許せ!!
せぇ~の!!」
ガギッ!! ギギギ…ググググググ…ギギギギ…ギギギギ…パァ~ン!!
「はあはあ…やっと、開いたよ。
親父、ヘソクリでもしてたのかな?」
不埒なことを考えながら、慶太は、亡くなった父…高志の書斎デスクの引き出しを開けようと、悪戦苦闘していたのだ。
勢いよく開いた引き出しの中には、一冊の綺麗な本が、入っていた。
厚みのある重厚な表紙は、この部屋のどの本とも、違っていた。
「タイトルがない?」
どうやら、その本には、タイトルがつけられていないようで…。
「もしかして、オーダーメイドの一点物って、やつなのかな。」
何気なく、表紙をめくると、中紙に、手書きで、こう書かれていた。
【高志…お前が、信じるか、信じないか、わからないが、真実は、一つだけだよ。…恵】
高志は、親父だよな。
恵って誰だ?
聞いたこともない、名前に、首を傾げながら、また、一枚、ページをめくっていた。
【こことは、違う、背中合わせの世界で、鳴り響いた一発の銃声が、世界の歯車を壊してしまった…。
その銃声は、静かな山々に、響き渡った瞬間に、別の歯車が、予定外に動き出した。
これから、起こる出来事は、すべて、これに起因する。
一体だれが、持ち込んだのだろうか…悪魔の囁きを…。】
なんだ、この出だし…。
一応、物書きの端くれで、書いてなんぼの生活している俺としては、すげぇ、気になる…。
自然に、次のページへと、読み進めていた。
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