Act.0-a 引き出しの中(1)

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「くそぅ!…なんで、開かないかな…う~ん!!…くうぅ~ぅ!!」 ガタガタいわせているのだか、一向に、この引き出しは、開かない。 「…こうなったら、仕方ない。 南無南無南無…っと。 親父、許せ!! せぇ~の!!」 ガギッ!! ギギギ…ググググググ…ギギギギ…ギギギギ…パァ~ン!! 「はあはあ…やっと、開いたよ。 親父、ヘソクリでもしてたのかな?」 不埒なことを考えながら、慶太は、亡くなった父…高志の書斎デスクの引き出しを開けようと、悪戦苦闘していたのだ。 勢いよく開いた引き出しの中には、一冊の綺麗な本が、入っていた。 厚みのある重厚な表紙は、この部屋のどの本とも、違っていた。 「タイトルがない?」 どうやら、その本には、タイトルがつけられていないようで…。 「もしかして、オーダーメイドの一点物って、やつなのかな。」 何気なく、表紙をめくると、中紙に、手書きで、こう書かれていた。 【高志…お前が、信じるか、信じないか、わからないが、真実は、一つだけだよ。…恵】 高志は、親父だよな。 恵って誰だ? 聞いたこともない、名前に、首を傾げながら、また、一枚、ページをめくっていた。 【こことは、違う、背中合わせの世界で、鳴り響いた一発の銃声が、世界の歯車を壊してしまった…。 その銃声は、静かな山々に、響き渡った瞬間に、別の歯車が、予定外に動き出した。 これから、起こる出来事は、すべて、これに起因する。 一体だれが、持ち込んだのだろうか…悪魔の囁きを…。】 なんだ、この出だし…。 一応、物書きの端くれで、書いてなんぼの生活している俺としては、すげぇ、気になる…。 自然に、次のページへと、読み進めていた。
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