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一際、大きな雷鳴が、響き渡り、また、どこかに、雷が落ちたのだと、思った瞬間、さっきまで、聞こえなかった雨音が、ふいに、聞こえるようになった。
俺は、その場にヘタリ込み、ぼおっと、目の前で、起こっている不思議なことを見ていた。
10数匹の訳がわかないいきもの…犬でありながら、犬でもない、恐ろしい獣は、1匹、また、1匹と、姿が、消えていく…。
まるで、映画の吸血鬼のように、塵か砂かに変わってしまい、雨の勢いで、そいつらは、流されてしまった…。
あれは、なんだったんだろう?
あんなものが、この世にいる訳ないんだ…。
「恵!!…恵、大丈夫?怪我とかしてない?」
駆け寄ってきた沙樹が、俺を、抱きしめて、聞いてくる…。
見た目より、ずっとおっきい胸が、当っていて、俺にはない、柔らかな体の感触に、思わず赤面してしまう…。
「…だ、大丈夫だよ。怪我もしてないし…ほら、生きてるから。」
そう言ったら、やっと、解放してくれた。
「あの子供達、家へ送ってやらないと…。」
「うん、そうだね。」
俺達は、子供達に聞いて、家の近くまで、送っていた。
団地の真ん中あたりで、子供達を探す母親を見付けた。
真実を話したところで、しかたがない…。
俺達は、野犬同士の争いの場に、この子達が、巻き込まれて、帰るに帰れなくなっていたのだと、説明して、母親に、子供を手渡すと、その場を離れた。
「びしょ濡れだから…。カラオケ…いけないね。こんなんじゃ…お店に、迷惑だもん。」
出来るだけ、俺達は、さっきの話をしないようにしていた。
話したら、最後、踏み入れてはいけない場所に、足を入れてしまいそうで…。
もう、退屈なんて言いません…神様、どうか、平凡で普通の生活を、俺達に送らせてください…。
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