- 失恋 -

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偶然だった。 久しぶりに逢った彼に声をかけようとして聞いてしまった。 学校に仕事で来ていたらしい彼と、先生の会話。 「…結婚、するんですね。おめでとうございます。」 私が笑顔で言うと、彼は悲しそうな顔をした。 なんで、そんな顔するの? 不思議そうにする私に彼は優しくキスをすると、ぎゅっと抱きしめてくれた。 「ごめん。本当にごめん…。」 彼との想い出が蘇って。 離れたくないって思った。 私、こんなに好きだったんだね。 …今更、気がつくなんて。 彼を校門まで送ると可愛い彼女が迎えに来た。 彼の笑顔を見るのが寂しい。 「…最後に、一言だけ。」 思わず口にした声は思ったより大きくて、みんな驚いてた。 彼は少し離れて待つ彼女を見てから、静かに頷いてくれた。 何を言っていいか分からない。 でも、少しでも伝えたいの。 「…今日、貴方の夢をみたの。」 一言ずつ、大切に言葉を紡いだ。 とっても逢いたかった。 想いが溢れだしそう。 「貴方に逢えて、よかった。」 ――大好きなの。 もう、言えないけれど。 「――さようなら。」 精一杯の笑顔で別れを告げ、彼に背を向けた。 私ちゃんと笑えてたよね? もう堪えなくていいよね? 涙が止まらない…。 失恋、なんだね。
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