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カンカンカンカン───。
踏み切りの棒がゆっくりと下がってきた、そろそろ電車が来る。
飛び込めば、小学生の私のカラダなんて簡単に吹き飛んで死ぬ。これでやっと死ねるんだ。
「おい、何やってんだよ!」
後ろから、声がした。うるさいな
私は振り返る。そこにはいつの間にやら私と同じくらいの歳の、ランドセルを背負った男の子が立っていた。
「飛び込んで、死ぬの。」
私はいつになくニッコリして言った。男の子は黙ってる。夕陽に照らされて、その顔はどこか寂しそうだった。
「電車にぶつかったら死ねるでしょ?…私ね、死にたいの。すっごくすっごく死にたいの。……死んだママに会いに行くの。」
「父ちゃんは居ないの?」
「……居るよ。でも、居ないようなものだよ。」
答え方が悪かったのかな?男の子は難しい顔になっちゃった。私はそのまま続ける。
「パパはね、私と私のママなんかよりお金にしか興味なかったの。だから……だからどんなにママが病気になって苦しくってもお見舞いにすら来てくれなかった!!!」
最後の方はもう怒鳴ってた。分かってる、これは私の八つ当たりだって事くらい。でも、ガマン出来なかった。電車の音が近くなってきた。
─なんだ、そんな事か─。
男の子はそう言った。いや、そう言った様に見えた。多分。電車の音に掻き消されて音は聞こえなかった。でも、何となく口の動きでわかる。私じゃなくて、他の誰か。きっと自分自身に言い聞かせてる。
「いいか!!」
今度は私のために、電車の音に負けない声で叫んだ。
「母ちゃんが死んだ?そりゃ悲しいよな。だけど、だけどな!!そんな時こそ笑え!!!腹の底から笑うんだ!あんたの名前なんて知らないけど、また死にたくなったらオレを呼べ!!!!その時はオレがあんたを笑わせてやるよ!!!!!」
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