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ドアを開けると 中は少し薄暗く、地下室のイメージそのままな光景が広がっていた…しかも棚がいくつも列んでいて入り組んでいる。
ファイルの場所、Cの204か…
Cの204…204…
棚に貼られたラベルを見ながら足を進めていた俺は聞こえる筈のない声が聞こえその足を止めた。
「……ンっ」
誰かいるのか…。
別に他の誰がいても普段なら気にもしないけど、覗く俺の視界に映ったのはスーツ姿の男と同じくスーツを着た女が抱き合い唇を寄せている姿だった…
ったく、何やってんだよ。
しかも今いるラベルの場所からいって、多分俺が探しているファイルはあの辺にあるのが容易に伺える…
どうせやるなら他の場所にしろよな
あ~くそ、こんな事なら美加に来させるんだった…
あいつなら、こういうの平気であしらえそうだし。
そんな事を思っても今更 美加を呼ぶ訳にもいかずどうするか思案する…
時間もないし普通に出て行く、しかないよな。
覚悟を決め足を進め様とした瞬間 男が呟いた…
「ごめん…。もうそろそろ行かなきゃ…」
「う、ん…私も戻らないとマズイよね。
2人で長く席外してたら何やってたんだって怒られそう…」
「そうだね。じゃ、俺先に戻るから…」
「うん…今日はユックリ出来て良かった、また後でね」
女の頭を撫でた後、男が歩いてくのを見て女の方もすぐに退くだろうと待っていたら、
男が忘れていった物だろうか落ちていたボールペンを女は拾い上げそれを大事そうに胸へ当てた…
その後、彼女が呟いた言葉に俺の体が思わず動く…
「……久志。」
体を隠していたのに、その言葉を聞いた瞬間 足が動き体をそっちに向けていた…
有りもしないのに、
あいつは今日休ませているから
少し冷静に考えれば分かる事だったのに
考えるより先に体が動いていた…
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