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『やっぱりってどういう……』
ピリリリ…
全ての言葉を言い終わる前に携帯の着信音が鳴り響き、遮る。
あ、私だ。
鞄から伝わる微かなバイブ音に反応し、急いで携帯を取り出した。
出ようか迷うも着信の相手は杉浦さんで、思わず通話ボタンを押してしまった。
千夏がいるのに、電話に出る事の承諾を得なかった事が迂闊だったかと思うも勢い余り出てしまったから仕方ないと電話を耳に押し当てる。
『も、もしもし?』
「朝比奈か? 今、お前の家の近くにいるんだけど…
今から行っても平気か?」
『はい?』
頭が一瞬パニックになり口籠る…
なんで杉浦さんがウチに?
え?もしかして遊びに、とか?
いやいや。そんな訳ないか…
『あの、なんでウチに?
今家にいないんですけど…』
恐る恐るそう言えば杉浦さんはため息を落とし「なんだ そうか」なんて呟く。それを聞き完全に首を傾げ頭からハテナを沢山飛ばしてるとまた杉浦さんの低音な通る声が耳に届く…
「お前んチの鍵預かってるから返しに行こうかと思ったんだけど、そうかいないのか。」
『鍵?』
「そ。 昨日 酔ったお前を家まで連れてったのはいいけど、
仕事が残ってて帰らなきゃ行けなくて
鍵勝手に閉めて出てきたんだよ。
だから今日返そうとおもったんだけどな。」
そうだったんだ、全然知らなかった
鍵がないのは気付いてたけど、スペアキーがあったし特に気にしなかった。
「どうするかな」
『あ、じゃあ後で私取りに行きます…』
昨日のお礼も言いたいし。なんて言おうとして口をつぐむ…
おっと、千夏がいるんだった…
別にやましい事も何もないけど、昨日誰といたかって質問に嘘をついてしまっているから今更バレる訳にいかない。
『じゃあ、後で連絡します』
「ああ。わかった」
電話が切れた事を確認し携帯を鞄に押し込んだ。
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